プリンターの印刷方式についてまとめてみました
先日、プリンターの処分方法について売るのと粗大ゴミのどちらがいいのか調べてみました。
特に最近はインクジェットプリンターばかり目にしますが、それ以外の方式を採用したプリンターも多数利用されています。
なんですけどプリンターはインクジェット方式以外の印刷方式もある訳ですよ。例えば感熱紙を使ってるレシートプリンターとか。
プリンターの処分についてまとめていくうちに、用語的に説明する必要があるんじゃないかと思い始めたので今回の記事を作る事にしました。
という事で、今回はプリンターの印刷方式についてまとめてみたいと思います。
プリンターの印刷方式について
「パソコンから出力するデバイス」はプリンターという名称にまとめられているのが現状です。
でも一口にプリンターと言っても、印刷方式によって分ける事ができます。主な方式を上げてみると
- インクジェット
- レーザー(正式には乾式電子写真方式プリンターです)
- 熱転写(熱溶融型と昇華型があります)
- 感熱
- ドットインパクト
と言った所でしょうか。上から順番に見ていきたいと思います。
※3Dプリンターとかレーザー刻印プリンターとかもありますが、今回は割愛します。
インクジェット
2000年以降から現在に至るまでの主流の印刷方式ですね。
インクジェットは液体のインクを用紙に直接噴射して印刷する方式です。
余談ですが、以前はレーザーの大型モデルばかりだったオフィス向けのプリンターも、技術革新により色々なモデルが発売される様になりました。
インクジェットのメリット
インクジェットは主に以下のメリットがあります。
- 直接インクを噴射するので紙以外にも印刷できる
- インクを増やす事で6・7・10色など多色刷りが可能
- 他の印刷方式に比べ構造が簡単なので安価、小型軽量なモデルが多い
安価、軽量のメリットもありますが、一番のメリットは色々な物に印刷できる事だと思います。
CD-RやDVD-Rのレーベル印刷をはじめ、例えば好きな絵や写真を印刷した熱収縮プラ板を加熱してキーホルダーを作る、なんて夏休みの自由工作的な事も手軽にできたりします。
これは他の方式にはないメリットです。
インクジェットのデメリット
やっぱりデメリットもあり、主に以下の物があげられます。
- 専用のインクや紙が高い(そういうビジネスモデルですしね)
- インクが液体のため、印刷する媒体によってはにじみが多く発生する。
とにかく純正品、特にインクが高くつきます。
機種によっては3セット位買ったら本体と変わらない位のコストが掛かる事も。
あまりにも高コストなので互換インクを使う方法もあります。ですが色味の違いやインク詰まり等の問題もあるので積極的にオススメはしていません。
インクジェットのインク
印刷にはインクを用いている訳ですが、さらに色を付ける素材により主に染料インクと顔料インクの2系統に分ける事ができます。
顔料と染料の違いをザックリまとめると
- 発色がよく、色の階調が再現しやすい
- インクが紙の中に浸透するので、紙の光沢がそのまま生かされる。(光沢が出やすい)
- 紙によってはにじみが大きくなったり裏に染みることがある。
- 水濡れに弱い
- 太陽光などで色あせしやすい
- 水濡れに強い
- 太陽光などで色あせしにくい
- にじみも出にくく、裏に染みない
- 摩擦に弱い
- 乾燥しにくい
- (インク性能次第だが)光沢感が出にくい。
という感じです。
なので高画質の写真印刷向けモデルや高いモデルは顔料インクを、それ以外のモデルは染料インクといった構成が多くなっています。
ですが最近は発色の良い顔料インクや耐水性、耐光性の高い染料インクが出てきたりと一概に言えなくなってきました。
それと昔は「染料のエプソン、顔料のキヤノン」とメーカーで異なっていたりと分かりやすかったのですが、最近は機種によってまちまちです。なのであまり気にしなくても、という所ですね。
レーザー(乾式電子写真方式)
レーザービームプリンタ、ページプリンタ等と言われるプリンターが採用している方式です。印刷方式としては「乾式電子写真方式」が正式名称になります。
「名は体を表す」とでも言いましょうか、印刷の流れは
- 感光体(ドラムユニット)を帯電させる
- 感光体に印刷したい内容をレーザー照射(露光)
- 感光体のレーザーが当たった所にトナー(インクみたいな粉)が静電気でくっつく
- 付いたトナーを別のローラーに転写
- ローラーから紙に移す
- 熱と圧力をかけて紙に定着させる
という手順を踏んで印刷します。
モノクロの場合はこの流れが1回、カラーの場合はブラック・シアン・マゼンタ・イエローでこの流れを4回行います。また最後に熱と圧力をかけるので印刷後の紙が暖かくなっている訳です。
この仕組みがメリットでもあり、デメリットでもあります。
レーザーのメリット
主なメリットは
- にじみが発生しない(かなりキレイに印刷ができます)
- 1枚当たりの印刷コストが安い
- 印刷速度が速い
という点です。早くて安く、しかもキレイに印刷できるし印刷物の耐久性(耐光性、耐水性)も高い、となればビジネス用途でよく使われるのもお分かりいただけるかと思います。
さらにカラーの場合は1枚あたりの印刷コストが相当安いです。これより安くするには印刷業者に依頼するとか、そういうレベルですね。
なんですけど、今の世の中メリットよりデメリットの方が問題かもしれません。
レーザーのデメリット
主なデメリットです。
- 本体が大きく重い(モノクロ限定ならコンパクトな機種もいくつかあります)
- 消耗品が多く、価格も高い(大量印刷が可能なものの万単位)
- 消費電力が大きい(仕組み的に仕方が無い)
- コーティング紙等の特殊な用紙は使用できない
特筆すべきは消耗品でしょう。
まずインクとなるトナーが高いです。トナー以外にも感光体、ヒーターユニット、現像剤、廃トナーボトルと言った消耗品が存在します。これらが全部高い。
1枚あたりの印刷コスト的には安いのですが、こういった消耗品類が高いです。
なので定期的にかなりの枚数を印刷しないなら逆にインクジェットの方が割安になります。
レーザーのインク
レーザープリンターのインクはトナーと呼ばれる物になります。
トナーは帯電性を持ったプラスチック粒子に炭素等の色粒子を付着させたものです。マイナスかプラスの電気性質を持つ微粒子で、粉末状でカートリッジに入っています。
コピー機のトナーと似たものですね。手に付くとえらい事になります(体験済)。
熱転写式
熱転写式プリンター、もしくはフォトプリンターと呼ばれるタイプです。
元々数は少なかった物の、今ではごく一部で採用されている方式です。
目にできるのだと、キヤノンのコンパクトフォトプリンター「SELPHY」シリーズや、店頭に置いてあるセルフプリントシステム、ファックスの普通紙対応モデル位でしょうか。
熱転写式プリンターはインクを熱で溶かして紙に印刷する方式ですが、紙への定着方法の違いで
- 熱溶融型:熱で溶かしたインクを紙に付ける
- 昇華型 :熱で蒸発させたインクを紙に付ける
と2通りありますが、どちらも熱を使うので熱転写方式になります。
熱転写式のメリット
主なメリットです。
- 高画質
- 耐光性、耐水性が高い
- 印刷用紙を選ばない(方式としては選ばないが、大体の機種が専用紙)
とにかく高画質、と言うのが最大のメリットです。
ですが画質と耐性の高さ以外のメリットがなく、逆に次のデメリットの方が重かったのでパソコン用プリンターとしてはマイナーな印刷方式となりました。
熱転写式のデメリット
主なデメリットです。
- 消耗品が高い
- 印刷が遅い
- インクリボンが切れたらどうしようも無い(始めに切れたらカートリッジ全部廃棄…)
どうやっても遅くて消耗品が高かったんです。
例としてSELPHY CP1300の用紙とインクセットだと、L版36枚の用紙とインクのセットで約3,000円です。1枚あたり83円位ですが、同じキヤノンのハイエンドクラス、PRO-1000(インクジェットプリンタ)でもL版は1枚あたり31円程度となります。
昔のインクジェットは画質が酷かったので、印刷品質の優位性がありました。ですが性能向上によりその優位性もドンドン失われ、結果として一部用途に残った、という状況です。
またレーザープリンターと同様、色別に印刷する事になるので色数により何往復もするので印刷時間もかなりかかります。
この印刷に時間がかかりすぎる点もネックで、一部ユーザー向けのプリンターとなってしまった訳です。
熱転写式のインク
熱溶融型と昇華型のどちらもインクはリボン型になります。
どちらも専用のカセットに入っていて使い切りです。巻き戻して使い直す事は出来ません。たとえリボンの右端1ミリだけとか、真ん中1ミリしか印刷で使って無くても再利用は出来ません。
ただあまりのもったいなさにインクリボンを再利用できる様にする物もありました。
感熱式
この感熱式は日常でもよく目にします。一番目にするのはレシートプリンターでしょうか。
熱を加えると色が変化する専用紙(感熱紙)を使い、熱した印字ヘッドを当てて印刷します。印字ヘッドを感熱紙に直接当てるので「ダイレクトサーマルプリンター」とも呼ばれる事もある様です。
ファックスの感熱紙タイプはこのタイプです。
感熱式のメリット
主なメリットは以下になります。
- 動作音が非常に小さい
- 比較的簡単な構造
- 唯一の消耗品は感熱紙のみ
小さくて軽くて安いプリンターが作れます。
モバイルプリンターも多くは感熱式ですし、レシートプリンターも見た目よりかなり軽いです。
感熱式のデメリット
主なデメリットです。
- 専用紙以外に印刷できない
- 時間が経過すると色あせてしまい長期保管には向かない
レシートを思い浮かべて頂ければ、と言う所ですね。レシートも直射日光に当ててればすぐ消えますから、長期保存には向かない方式になります。
メリットで上げたモバイルプリンター、便利ですが感熱紙にしか印刷できないのはデメリットでもあります。
用紙切れたら印刷できないんですから。
感熱式のインク
感熱紙は熱に反応する薬品が塗られており、その薬品を熱で変色させて印刷しています。
感熱紙はよく見ると表面に微妙な光沢があります。この光沢がある面をツメでこすると黒い線が引けるのは摩擦熱で変色する為です。
この感熱式は専用の感熱紙しか印刷できないので、メーカーが色々なサイズの物を提供しています。
そういえばワープロのプリンターも熱を使う方式(熱転写型)でしたから、ちょっとした物は感熱紙を使って印刷していました。昔は感熱紙も汎用品が結構あったんですよね。
ドットインパクト
印刷物は目にすれど、プリンター本体は業務で使わない限りまず目にしないと思います。目にした事のある方は少ないのでは無いでしょうか。
このドットインパクトは点状の細い金属を組み合わせて文字や図柄を作り、紙の上に配置されたインクリボンに叩き付けて印刷する仕組みです。
よく見ると文字や図柄を描いているのは丸い点ですし、たたきつけるので複写型の伝票にも利用できる訳です。
ドットインパクトのメリット
主なメリットは以下になります。
- 複写用紙への重ね印刷ができる
- 他のプリンターより消費電力が小さい
- インクリボンが乾燥に強い
繰り返しですが一番のメリットは複写用紙に印字できる事でしょう。
ドットインパクトのデメリット
主なデメリットです。
- うるさい(本当にうるさいです)
- 印字品質が低い
- サイズが大きい
と言う事で、やはり家庭向きでは無く業務用になります。
実際動作音はかなり大きいので、大きい音が許される所でしか使えないプリンターです。
ドットインパクトのインク
インクリボンになります。
熱転写型の様なフィルムではなく、布製のリボンにインクをしみこませた物になります。
このインクリボンも使い回しが出来ないので再生品や詰め替え用インクリボンが販売されています。
おわりに
プリンターの印刷方式をまとめてみました。
各方式は開発されてから基本的な構造は変わらず、細かい改善が成されたモデルばかりなんですよね。
そうやって色々な方式のプリンターがあったのですが、淘汰された今はインクジェットプリンターばかりとなりました。
昔は色々な選択肢があって、その中から選べるのは楽しかったのですけどね。そういう時代でない事もわかりますが、尖った面白い方式のプリンターが出てこないかなぁと思っています。
何かの参考になれば幸いです。